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ジビエ利活用関連情報

Manual

処理活用マニュアル

捕獲したイノシシ、シカを活用する目的の再確認

農林業被害対策の一環として捕獲したイノシシやシカを食肉として利活用することで、被害対策の推進や地域振興などへの効果が期待されます。一方で、ジビエを製造することが目的となり、「手段が目的化」してしまうことで、地域の負担が増え被害対策に繋がらなくなってしまうという恐れもあります。
捕獲個体の利活用を検討する際には、地域の目指すものや目的をしっかりと検討して実施しましょう。

食肉利活用に期待されること

  • 捕獲個体の埋設や焼却処理にかかる費用や労力を低減できる。
  • 「命をいただく、命を無駄にしない」ことで、捕獲者の意欲低下を防止する。
  • 地域の特産品づくりによる地域活性化に繋がる。
  • 食育、環境教育に活用できる。

食肉利活用の可能性と課題

  • 被害対策の一環で取り組むのであれば、被害が無くなれば取り組む必要がなくなります。一方で、ビジネスとして取り組む場合は、今後イノシシやシカの個体数が減少し、捕獲数や搬入数が減ることで事業が成り立たなく場合も想定されます。
  • 将来的には捕獲個体の商品価値が高まることで、捕獲が推進され、被害の軽減につながることが期待されますが、高値で取引されることで、捕獲者が個体を残す方向に意識が移ることや、外国産のシカやイノシシが輸入され、国内のシカやイノシシの流通が減少する可能性もあります。

Point

「夏イノシシ」の課題

  • 被害対策の一環で捕獲したイノシシを活用する場合、メインは夏に捕獲した個体を活用することになり、現状での市場価値は冬季の脂ののったイノシシが高いため、活用は難しくなります。
  • その対応として、夏のイノシシ肉の販売促進を検討する施設もあります。よりヘルシーな肉としてニーズを探っています。

Point

伝統的ジビエ活用

  • 「被害対策の一環で」という時代より前から山村地域の特産品として野生鳥獣の肉を活用している地域があります。その場合、専属ハンターが捕獲した個体を仕入れているため、被害対策で捕獲した個体を積極的に仕入れることはしません。一方、被害対策に資するためには、捕獲個体のすべての搬入を受け入れることが望ましいため、仕入れる個体の品質にばらつきが出てしまいます。

被害対策に資するジビエ活用の事例

①農地近くで捕獲、施設スタッフが止めさし

農地周辺に農家がわなを仕掛け、捕獲された個体は処理施設のスタッフが止めさし、回収を行うという連携体制が構築されている事例があります。被害が発生する農地周辺で捕獲を行うため、被害防止に直結する他、車が入りやすい場所での捕獲となるため、捕獲個体の搬出がしやすく、利用率も高まります。また、施設のスタッフが止めさしを行うため、搬入個体の多くが利用できる状態となり、施設の採算性向上にも貢献します。

農地近くで捕獲、施設スタッフが止めさし
  • スタッフが止めさしをするので、搬入個体の多くを利用できる
  • 農地で捕獲するため、農業被害防止につながる
  • 搬出しやすい場所(農地)で捕獲するため、活用率は高い

②全頭搬入の仕組み

その地域で捕獲された個体は全て一か所に集まるという仕組みを作る全頭搬入体制を構築する事例があります。全頭搬入されることで、1000頭規模となるため、施設運営の安定に繋がります。搬入された個体は、状態等により、食肉、ペットフード、廃棄に仕分けを行い、それぞれ処理、活用します。

全頭搬入されることで、奨励金の確認事務を軽減し、不正防止にもつながります。また、捕獲個体の処理を施設が担うため、捕獲従事者の個体処理の負担軽減につながります。

全頭搬入の仕組み
  • 1000頭以上の規模で施設が運営できるので、運営が安定する
  • 捕獲者の処理の負担を減らす
  • 良い個体が集まりにくい可能性がある