農業被害対策とジビエ活用の関係
農業被害対策の一環で捕獲した「シカ・イノシシの生命」をジビエとして活用する動きが広まっています。一方、ジビエは一般消費者向けの食品なので、衛生管理やおいしさ、経営手腕等も求められます。被害対策と事業継続を両立させるには、一般的な食品以上に豊富な知識が必要です。
ジビエの魅力と地域振興
ジビエは低カロリー・高タンパクである魅力的な食材です。農業被害をもたらす厄介者を、地域の特産品として販売することで、地域の産業を興し、地域の雇用創出、地域の活性化につなげることができます。
消費者目線の衛生管理
シカやイノシシなどの野生動物は、豚や牛などの家畜とは異なり、捕獲されるより前の生育状況は把握できません。消費者が安心して食べられるように、食肉処理においては食品衛生法や厚生労働省のガイドラインを遵守しなければなりません。
消費者目線のおいしい肉づくり
ジビエのおいしさは、止め刺し・放血の方法や捕獲後の運搬時間などの影響を大きく受けます。一般の消費者にとって「おいしい肉」を提供できるように知識と技術が必要になります。
持続可能な仕組みづくり
農業被害の観点からすればシカが減ることは喜ばしいことですが、ジビエの安定供給の観点からすれば、シカの頭数が減るほど事業の継続が困難になります。事業を始める前には、ジビエ活用の目的や捕獲頭数、体制などをしっかり検討し、持続可能な仕組みを作ることが必要です。
地域の獣害対策と連携
野生動物による被害は農業だけにとどまらず、車や人との接触事故や生活被害など、地域全体の問題でもあります。そのため地域全体で正しく野生動物のことを知り、行動することが重要です。
ジビエに関する実績等
研究事業
「スマート捕獲・スマートジビエ技術の確立((国研)農研機構生研支援センターによる委託研究事業)」(平成30~令和2年度)
「被害対策に資する捕獲・利活用推進コンソーシアム」の一構成員として、「高品質ジビエ肉生産のための捕獲手法の確立」の中課題にて、捕獲方法と肉質の関係を研究しました。
「イノシシ、ニホンジカ等の適正かつ効率的な捕獲個体の処理および完全活⽤システムの開発(環境省 環境研究総合推進費(3K163003))」(平成28年~30年度)
「捕獲個体の完全活用コンソーシアム」の一構成員として、獣害対策で捕獲された個体処理方法(食肉、ペットフード、減容化、焼却等)の現状と課題を全国で調査しました。
補助事業等
「利活用技術者育成研修事業(農林水産省補助事業)」(平成22年~令和4年度)
被害防止の一環で捕獲されたシカ、イノシシの食肉利用、ペットフード利用、適切かつ低コストの最終処理方法等についての研修会について、カリキュラム・テキストの作成及び、実技を含む研修会の実施を全国で行いました。また、これらの技術に関するマニュアル作成を行いました。
「国産ジビエ認証委員会 事務局運営」(平成30~令和4年度)
農林水産省鳥獣被害対策交付金鳥獣利活用支援事業(その3)の交付を受け、委員会の事務局を運営し、制度設立時の支援や委員会運営、制度説明会の開催等を実施しました。
「有害鳥獣の捕獲後の適正処理に関するガイドブック(国立環境研究所等)」の作成協力
環境研究総合推進費の研究事業の成果を活用したガイドブックの作成に協力しました。
他
静岡県、鹿児島県、長崎県、徳島県などでジビエ活用に関する講演や、マーケティング調査、処理加工施設設置にむけた調査・計画等の事業を実施しました。
「野生動物管理全国協議会」の事務局として、平成25年から取組を行っています。