安心・安全なジビエペットフードのために
愛がん動物用飼料(ペットフード)に関する法令は、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)がありますが、製造・販売にかかる基準・規格として、「安全な原材料を使用すべき」という事は記載されているものの、原材料そのものの製造方法については具体的に規定されていないのが現状です。
(株)一成では、ジビエペットフード利用推進協議会の一員として、ジビエペットフードの原料に関する衛生的な処理加工方法を解説したマニュアルを作成しました。
ペットの健康を守るためにも、ペットフード原材料としてのジビエに関しても、食用(人用)と同様に安心・安全の確保が必要であると考えます。
ジビエペットフードの役割 ①消費者(ペット)へのメリット
「ジビエ」と聞くとフランス料理や里山の観光名物というイメージがありますが、牛や豚に比べて低脂質・高たんぱくで、鉄分など様々な栄養に優れていることから、アスリートが毎日の体づくりに活用する食材としても注目されてきています。
また、特にシカ肉の「低脂質」という特徴は、脂が多いと不適であるペットフードの素材にも適しており、ジャーキーをはじめとして、総合栄養食やウェットフード等、様々な製品をペットショップ等で見かけるようになりました。そして、栄養面だけでなく、鶏肉や牛肉が体質に合わないペットのたんぱく源としても注目を集めています。
自然の中で育ったイノシシやシカは、「100%メイドインジャパン」の食材として、人の食用だけでなく、ペットフードの材料においても、より広く活用されることが期待されます。
ジビエペットフードの役割 ②ジビエ処理施設へのメリット
イノシシやシカの解体処理を行うジビエ処理施設は、被害防止のための捕獲頭数の増加に伴い増えており、2021年度野生鳥獣資源利用実態調査では全国に734施設あるとされています(農林水産省HPより)。ジビエ処理施設において2021年度に処理されたジビエの量は2,127トンであり、2016年度と比べて1.7倍に増加しています。そのうち、ペットフードの割合は30.8%(2021年度)となり、2016年度の11.7%から3倍程度増えています。これは、コロナ禍の影響により、外食産業が影響を受けた一方で、毎日の食事であるペットフードへと販売先を拡大した施設が多くあったこと等が要因と考えられます。
これらの状況からも、ジビエ処理施設が食用(人用)に加えペットフードに取組むことで、下記のメリットが期待されます。
■ジビエペットフードに取組むメリット(例)
- 食肉処理の中で発生する副産物(内臓、骨、角等)の活用と残渣軽減ができる。
- 人間の嗜好と合わず食用に適さない個体(脂不足の夏イノシシ、放血不足・性臭がある個体等)を活用できる。また、脂が少ないことはペットフードにとっては最適である。
- 食用とペット用、販路の多様化により経営リスクの軽減を図れる。
- 捕獲個体を搬入・冷凍した後、各ストックポイントから収集し、まとまった量を解体することで、作業効率が大きく向上する。
ペットフード原料に適するジビエについて
農業被害防止等の目的で捕獲したシカやイノシシは、資源として利活用する、しないに関わらず、適切な方法で処理することになります。捕獲個体を野外にそのまま放置することは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」で原則禁止されています。また、捕獲個体を生活環境上影響が生じるような処理を行った場合は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」に抵触する可能性もあります。
捕獲したイノシシ、シカについて、頂いた命を全て活用することが理想ではありますが、材料としての適性があるため、食用になるもの、ペットフード原料になるもの、どちらにも使えないものが発生します。
先述のマニュアルでは、衛生的に問題が無いものの、人間の嗜好(味の好み)と合わず食用に適さないジビエをペットフード原料として活用することを推奨します。
<食肉に向かないジビエのペットフード原料としての適否>
食用(人用)に向かない点 | ペットフード原料への適・不適 |
---|---|
脂不足の夏イノシシ、 幼獣(ウリ坊) |
○:脂が少ないことはペットフード原料として最適。 |
放血不足の個体や部位(わなにかかった足等)、 性臭がある個体 |
○:ペットの嗜好には影響が少ないため適。 |
搬入に時間がかかった個体 | 条件付き○:ジビエ処理施設のルールで決められた搬入時間を超えたものの、衛生的には問題がない個体であれば適。 |
捕獲時のストレスにより肉質に影響があった肉(DFD、PSE肉) | ○:色味や保水性に欠け、食用に不適となることがあるが、衛生的に問題ないものは適。 |
不人気部位、端材 | ○:トリミング端材や売れにくい部位。衛生的に問題ないものは適。 |
肉以外の副産物(内臓、骨等) | 条件付き○:内臓については異常が無く、衛生的に問題ないものは適。(内臓の利用に関しては、マニュアル30ページ参照) |
発見時に死亡していた個体 | ✕:利用不可。 |
余分な脂身 | ✕:脂はペットフード原料には不適。 |